ポップ・ポップ

ポップ・ポップ

海外のオーディオファイルも音質チェック用に使っている『ポップ・ポップ』だが…。このCD、けっこう鬼門なのではないかと最近思っている。マーク・レビンソンがデモでかけたことで話題になったCDだけに、音はいい。というか、音が良すぎて、ちょっとくらいシステムの調整が間違っていても、いい音で鳴ってしまう気がするのだ。リッキー・リーのヴォーカルもかなり特殊だしなあ。

その点、サム・フィリップスとかの汚い音は、調整がうまくいっていないと、ただ ばっちいだけ。これが奥深く、雰囲気豊かに、別の世界に心を持っていかれるかのように鳴ってくれると、システムもばっちい、じゃなくて、ばっちりということになる。

ベイシーの菅原さんは著書のなかで、ふつうの音のレコードがちゃんとなるよう調整していると書いている。だがこの言葉は菅原さん独特の皮肉だと思う。往年のジャズに関しては、ものすごいスーパー録音ばかりで、音の悪いレコードを探すほうがたいへんなくらいだから。

そういえばこの前、和田さんと昔の録音を聴きながら、今よりも録音技術は劣るはずなのになぜこんなに音がいいんだろう、という話になった。結論は、とにかくミュージシャンが出す音がすごいから。マイルスがプッと吹いたら、エリントンがガーンとピアノを弾いたら、それだけでほかになんにも必要ないっていうこと。

とはいえもしかしたら、昔のほうが録音技術は上だったのではないかという疑いもぬぐいきれないのだが…。