kekeさんはmeguropolitanさんや110さんとともに、業界(なに業界だ?)のオーディオ通として知られるひとり。我が家のCD12+NAGRA PL-Lの組み合わせは、kekeさんちのシステム(当時)をそのままパクったものだったりするので、足を向けて寝られない方なのだが…、実はまだ音を聴かせていただいたことはないのでした。そして。知らないあいだに、そのシステムは大きな変貌を遂げていた。

CD12とVERITY AUDIO Fidelioという入口と出口は変わらず。でもプリアンプにグリフォンSONATA、パワーアンプにはVIOLAの新しいパワーアンプFORTEを急遽導入。これは聴かせていただくしかない! ということで世田谷区の高級住宅街へと向かったのでした。参加者はmeguropolitanさん、110さん。

リスニングルームは約12帖のフローリング。スピーカーもCDプレーヤーもパワーアンプもコンパクトにまとめたおしゃれなシステム…と思ったら、プリがでかい(驚)。フロントパネルはガラスで、中央に想像上の怪物「グリフォン」が浮かび上がります。ここまで存在感のあるプリは、コニサー3.0やサザーランドC1000くらいでは?

そして、聴かせていただいた音は…ズバリ「デンマークの王室」。大理石張りの広い空間に、さえざえと、きれいに広がって行くような音。クオリティはあくまで高く、気位さえ感じさせます。

驚いたのは、とにかく、解像度がむちゃくちゃ高いこと。我が家でもリファレンスにしているリッキー・リー『ポップポップ』では、ベースの弦は、まるでピアノ線のようにぎりぎりと鳴り、楽器の定位も揺るぎなく決まります。滅多にないことですが、ヴォーカルにさえ、解像度という言葉を思い浮かべてしまったほど。

そして、おそらくはグリフォンの特徴なのでしょうか、温度感の低さがこれまた印象的。といっても冷静な感じというよりは、冷たいパッションを感じる音、というんでしょうか。広い空間で録音したピアノソロなど、まさに録音現場の緊張が再現されたかのような表現です。これはハマる! 三浦さんが好き、というのも分かる気がします。ただ、なんというか表現が難しいのですが、こういう表面的なインプレッションでは語りきれない、底知れないなにかがありそうなアンプでもあるのです。深海魚のよう、などと言ってもよく伝わらないと思うのですが、そう簡単には正体を見せない。まさに、想像上の怪物アンプなのかもしれません。「ステレオサウンド」の座談会で、評論家の方々の会話が噛み合なかったのも、うなづけます。