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先週の試聴会でNAGRA CDCを聴いたあと、110さんが見たこともないような顔で微笑んでいる。「買うしかないでしょ」と言うように。
CDCについては、書くことはいくらでもあります。とにかく表現がナチュラル。情報量が多いのに、刺々しさはみじんも無い。オーディオ的な快楽とミュージカリティが両立しているのです。
最高なのは女性ヴォーカル。ジェニファー・ウオーンズやカレン・カーペンターの口から出てくる空気のあたたかさ、声帯が震えるときの微小なバイブレーションまで伝わってくるよう。ヴォーカル好きにはたまらないでしょう。
しかしそれ以上に、ドギモを抜かれたのは、低音。JBL S7500から、いままで聴いたことがないようなドスの効いた低音が出ている。この小さい箱からなぜ?
まいったのは、古い音源の良さもじゅうぶんに引き出してくれること。たとえばマイルスの「マイファニーヴァレンタイン」。ポール・チェンバースのベースがこれほど歯切れよくリズムを刻むのを聴いたことがない。
聴いていると、CDに入っている情報をすべて引き出しているんじゃないか、という気がしてきます。なにか、揺るぎない感じがするのです。
CD12もそんなふうに思わせてくれるCDプレーヤーでした。でもNAGRA CDCは、さらに新しい世代の音がする。しかし!
先日書いたように、プリの電源の極性を逆にしたら、CDCショックが吹き飛ぶような音になっている。もうしばらくCD12とつきあうことになりそう。しかし、この状態でCDCをつないだら、どうなることやら。