ところで先日のオフ会でJeyさんにお聞かせしたのは、「BITCHES BREW」から"Miles Runs the Voodoo Down"。難曲が多い「BITCHES BREW」のなかでも、とびっきりの難曲。オーディオ界屈指のヘンタイJeyさんにはぴったりかと思って(あ、好きな音楽がヘンタイという意味です)。

この曲はライブもあるが、ヘンタイぶりはスタジオバージョンが突出している。とにかくリズムがおかしい。大工さんがトンテンカンと金槌をふるっているようなリズムから、おならにしか聞こえない(言っちゃった)マイルスのソロ。ドラムスは右と左で別のことをやっているようで、かろうじて正気を保っているのはハーヴィー・ブルックスのベースラインだけ。

「アニバーサリー・エディション」のライナーでは、裏事情が書かれている。ドラマーのレニー・ホワイトジャック・デジョネットもマイルスの要求するリズムが叩けず、パーカッショニストとして参加していたドン・アライアスが「その感じなら、オレがやれますぜ」としゃしゃり出たとか。

とはいえ、我慢すべし。マイルスの2回目のソロは超絶的であり、曲が終わるかと思ったあとのソロも悶絶ものだから。ぼーぼぼさんは20年ほど前、四谷のラーメン屋「こうや」の店先にあったスピーカーから流れてくるこのソロを聴いて、一瞬にして「BITCHES BREW」のすべてが理解できた気になったという。

ずっと、分からなかったのは"Miles Runs the Voodoo Down"の意味。オリジナルのライナーでは油井正一先生が「マイルスがブードゥーをけなす」と訳しておられたが…。「泥棒を捕まえる」みたいな意味もあるようなので、ライナーのエピソードから察するに「マイルスがブードゥーのリズムをやっとものにした」みたいな意味なのかもしれない。