70年代のヒーローものの傑作「スペクトルマン」は、当初「宇宙猿人ゴリ」というタイトルだった。しかし悪役が主人公というのはどうか、とクレームがあり、「宇宙猿人ゴリvs.スペクトルマン」とタイトルが変わり、最後に「スペクトルマン」になった。リアルタイムで観ていたから、よく知っている。ちなみに「ゴリ」の側近の名前は「ラー」。平和な時代である。

天才バカボン」の主人公はバカボンではなく、バカボンのパパである。そしてバカボンは名前ほど馬鹿ではなく、より馬鹿なのはバカボンのパパのほうである。ただ、「西からのぼったお日様が東にしずむ」というのはそれほど馬鹿な発言ではないような気がする。単に西と東が入れ替わっただけだ。バカボンのパパが「反対の反対は賛成なのだ」と言ったかどうかは知らないが、「逆相の逆相は正相である」といったぼーぼぼさんはバカボンのパパより賢いのか?

位相はソフトをふくめたシステム全体の問題であり、ゴールではなくあくまでスタートだという認識は大事だ。ただ、位相の問題を頭に入れておけば、オーディオにおけるよけいな回り道は少なくなるように思う。

ところで最近はバカボンというと「放浪者」を意味するvagabondに由来するとみる向きがあるが、少々かっこよすぎる解釈ではないか。それよりむしろ、赤塚不二夫氏は薄伽梵(bhagabad、すなわち世尊、仏陀を指す)を思い浮かべていたと私は考えている。ちなみにぼーぼぼさんのペンネームはマイケル釈尊だが、本物のマイケルがホトケになってしまったいま、『スリラー』の位相について確かめることができず困っているそうだ。