この世界の片隅で、昔から延々と続いている議論がある。SPを鳴らす方法として、ネットワーク方式とマルチアンプ方式、どっちが上なのか? という議論である。

ぼーぼぼさんの場合は親がJBLの3ウェイマルチだったし、マルチアンプ方式(ユニット直結)のお宅の音は何度も聴かせていただいている。だが正直に言って、「これは!」という音に出会ったことがない。というよりは、聴くに耐えない音のほうが多いという事実…(もちろんぼーぼぼさん自身の音を含む。いま思えば、父の音はかなり完成されていたと驚く)。亡くなった小林悟郎さんの音も、さすがにバランスよくまとまっていたけれど、音楽の躍動感を十全に伝えていたかというと、ちょっと薄味だったような気がする。

「一度マルチをやったら、もうネットワークには戻れない」という人もいるが、それはマルチにした直後の印象であろう。ぼーぼぼさんは3日後にはネットワークに戻したくなったそうだ。いまはLE15AとLE85をLX13ネットワークで鳴らしているけれど、音楽を聴く分にはとても満足しているという。

ところがこの「音楽を聴く分には」という部分がくせ者で、オーディオマニアはついつい別の何かを求めてしまうのだ。可能ならば目の前でミュージシャンが演奏しているようなリアルな音、思わず椅子から飛び上がってしまうような凄い音。「リアル」よりも「スーパーリアル」、「ナチュラル」な音ではなく「スーパーナチュラル」な音を求めてしまうのだ。

エジソンが蓄音機を発明したとされる1877年をオーディオ元年とすれば、いまはまだ100年ちょっと。オーディオはまだまだこれからだと思っている。まだまだいい音は出るはずだ(そう思わないとやってられないよね)。